
似たような敷地でも同じ家はふたつとない
今回のコラムでは、敷地形状とプランニングに着目します。
同じような形の敷地でも周辺環境等の条件によって家のプランニングは変わります。
方位や道路位置、家族構成や必要な部屋数等の条件が変われば、相応しい家は異なり同じものはふたつとできません。
そのような中でも、私たちに設計を依頼される方に共通する想いは「緑と暮らす家」を実現することなので、そのための工夫を重ねて設計しています。
今回は「越谷の家」を例にして、緑と暮らす家を実現したポイントをお伝えします。
あえて南側の窓を制限する
「越谷の家」の敷地は東西に長く、南は広い駐車場、東西は隣家に面する立地です。
一見すると、東西に長い敷地は陽当たりに優れて好条件に思えます。
しかし、実際は周辺環境により良し悪しが左右されます。
「越谷の家」の場合は、南側が駐車場のため不用意に窓を計画すると外からの視線が気になります。
せっかく大きな窓をつけても、視線が気になりカーテンを閉めて暮らすことになりかねません。
そこで、窓の数と大きさを制限し採光を得るための工夫を行いました。
Point1 プライバシーを守る|コートハウス
周囲に向けて大きな窓を設けないように、L字型に中庭を囲むコートハウスとして計画しました。
コートハウスのメリットのひとつは、プライバシーを守られながら外を身近に感じられることです。
アオダモを植えた中庭に面するリビングとプレイルームの窓を大きくすることで、採光や通風を確保しながら快適に暮らすことができ、緑を身近に感じられるようにしています。

コートハウスでは周囲の視線があまり気にならない
Point2 立体的な空間構成と上からの採光|ハイサイドライト
リビングの窓は、駐車場のある南側をあえて小さく少なくしています。
そして中庭に面する窓は大きくつくり、また上方をハイサイドライトとしました。
高い位置にある窓は部屋の明るさを得る方法のひとつです。ただし、大きな窓は熱が逃げやすく、冷やされた空気が窓から下降するので不快に感じやすくなります。
それを防ぐため、ハイサイドライトにはめ殺しの障子を入れて熱環境を向上させました。拡散された光はハイサイドライトの眩しさを軽減し、穏やかに明るく室内を満たします。
また、障子を入れることで隣家からの視線も防いでいます。


Point3 立体的な空間構成と上からの採光|2階のサンルーム
設計当初から要望のあったサンルームを2階につくりました。
室内干しができるように大きめのトップライトを設けていますので、いつも明るい場所です。
その特徴を利用して、サンルームと吹抜を障子で開閉できるようにしました。
障子は吹抜の反対側にあるハイサイドライトと同じように光を拡散します。そのため、開けても閉めてもサンルーム越しにリビングに光が届きます。
また、リビングは南側の窓が少ないですが、東に中庭とハイサイドライト、西にサンルームがあるので、太陽が時間とともに移動しても、一日中穏やかで明るい家となりました。
ハイサイドライトは定番の手法ですが、このサンルームとのつながりがこの家を特徴づけたと言えるでしょう。


高低差を利用した換気ができる
このように、東西に長い敷地形状でも諸条件によりプランニングが変わります。
その諸条件を丁寧に捉え、かつ活かしたプランニングをすることが家づくりでは大切です。


