『若林の家』は、南北に細長い32坪の敷地に建つ住まいです。
狭小住宅というほどの狭さではありませんが、まとまった庭をつくる余裕はありませんでした。
そのため、家のあちこちで緑を楽しめる工夫をしています。
そのひとつが、玄関前の小さな庭です。
玄関の前にベンチのあるポーチを設け、その道路側に設けたささやかな植栽スペースです。
この緑を回り込むように、ゆったりとアプローチします。
植えたのは枝ぶりが繊細なアオダモがメインで、足元にはユキヤナギやオタフクナンテンなども植えています。
アオダモは春に小さな白い花を咲かせる落葉樹で、自然な風合いのある株立ちを選びました。
広さは一坪+αと決して広くはありませんが、3つの役割を果たしています。
役割1.日々の出入りで緑を楽しめる
ふだんの出入りで自然に目に止まる位置に緑があることで、季節の変化も楽しめ木への愛着も増すでしょう。前庭があることでワンクッションでき、人を迎える役割も果たします。
役割2.ポーチが縁側のような場所になる
ベンチは家に入る際の荷物置きとしても便利ですが、ご近所さんとおしゃべりができる場となることを願って設けました。すぐそばにアオダモの木があることで落ち着いた雰囲気になります。
他のコラムで書いている「半屋外空間」の雰囲気ですね。
役割3.玄関の緩やかな目隠しとなる
ポーチと前庭が連なることで奥行き感が増し、玄関扉を開けた時に不用意に室内を覗かれにくくなります。
北側の小さな庭ですが、時間帯によっては緑が明るく照らされとても印象的な風景となります。
作品 | 若林の家
若林の家 住宅密集地で約32坪の敷地に建つ、3世代6人家族の住まいです。居住人数が多く斜線制限が厳しい状況でしたが、心地よい居場所がたくさんある家になりました。…
アプローチの緑|Case2.富岡の診療所
福島県富岡町にある『富岡の診療所』は、200坪を超える広さの敷地に建つ平屋の建物です。以前ブログに書きましたが、富岡町は東日本大震災で帰還困難区域に指定された経…
アプローチの緑|Case1.太子堂の家
アプローチに緑を植えると家の雰囲気がよくなります。以前から、設計の世界では「家の外観をまとめるのに困ったら木を植えよう」と、冗談のような格言のようなことが言われ…