『富岡の診療所』では、建物の北側に庭を配置しています。
住宅では、居室の陽当たりのためにメインの庭は南に設けることが多いですが、反対にしています。
その理由は、北隣にある『富岡の家』の緑とつなげることに加え、眼科のため待合室の室内光を安定させるということもあります。
そのような経緯で計画された庭ですが、北庭は植物の葉に日光が反射し緑がとてもきれいに見えるため、庭の眺めが存分に楽しめるというメリットがあります。住宅の設計の際にも、南側に庭をつくりにくい場合は北庭も考慮すると選択肢が広がります。
住宅と比較するとかなり広い庭で、外からだけでなく玄関や待合室などの室内からも出られるように計画しています。
植えられているのは、アオダモ、ナツハゼ、サルスベリ、ヒメシャラなどの中高木に加え、ヒメウツギ、アジサイ、コデマリ、ヒュウガミズキ、アセビなどの低木や、リュウノヒゲ、ヤブランなどの下草、キチジョウソウ、セキショウ、ノコンギクなどの野花まで多種多様で、三和土の苑路を歩いて散策できるようになっています。
また、奥行き感を作るために、苑路で囲まれた部分は土を盛りマウンド状にしています。また、緩い斜面になることで草花も室内から眺めやすくなり、まさに一石二鳥の工夫がされています。
上の写真は深い軒のデッキからの風景です。
半外部空間の心地よさと相まって、ベンチに座って眺めていると時間が経つのを忘れそうになります。
緑は建物の引き立て役としてただ植えられることも多いのですが、手を取るように歩いて緑をより身近に感じられると魅力はより増すように思います。住宅規模ではこのような広さの庭は稀ですが、日常の出入りの場所に植えるなど工夫次第で似たような楽しみ方はできます。
庭の様子がわかる動画です。
デッキのベンチから眺めています。