『井口の家』は地下室のある2階建ての住まいで、3層にわたる各階で異なる緑の姿を愉しめるようにしています。
見上げる緑|地下
寝室を地下に設け、半階ずれた半地下を天井の高い図書室にしています。
地面から1メートルちょっと下がっただけですが、地面にもぐるような格好になり落ち着いた雰囲気を感じられます。図書室を挟むように両側に庭を配置しているので、窓からは緑と空しか見えず、住宅街にいることを忘れそうです。
施主が中庭の緑を背景にしてオンライン会議をすると、「どこにいるんですか?」と相手から驚かれるそうです。
室内で木漏れ日を下から眺めていると、まるで大きな緑の傘の下にいるような感覚になってきます。
室内の延長として|1階
1階は植物を地植えした地上の庭が二つあります。
アズキナシとブドウ棚のある「デッキの庭」は、外に出て木陰のベンチで読書をしたり収穫もできます。
紅葉の美しいモミジをメインにした「中庭」には、目隠しとなる常緑樹・レモンやブルーベリーなどの樹々が植えられています。
室内から眺められるのはもちろん、室内の延長として活用できる庭は家で過ごす楽しみを何倍にも増してくれます。
風に揺らぐ葉を楽しむ|2階
2階はリビングです。
2階リビングは採光に優れますが、一方で地面から離れるため緑を近くで楽しみにくくなります。
そこで、窓から「中庭」のモミジと「デッキの庭」のアズキナシが近くに見えるようにしました。
1階からは主に幹が視線の高さに見えますが、2階からは葉が茂った上部が見えます。
植えてすぐは窓まで届く高さではありませんが、大きくなると目の前に葉が見え、新緑や紅葉、風に揺らぐ様子を愉しめるようになります。
道路の向かいは今では住宅が建ちましたが、当初は植木畑だったため借景も楽しむことができました。
このように、2つの庭の緑を異なる高さから眺め、立体的に愉しめる住まいになっています。
RC造の場合は、屋上庭園など別の工夫をすることもできます。