
先日、小さな名作住宅をふたつ見学してきました。
ひとつ目は、吉阪隆正の代表作「VILLA COUCOU」。
1957年竣工の住宅で2016年に女優の鈴木京香さんが受け継ぎ、2022年に新素材研究所が改修しています。
小さなワンルームのような住宅で、延床面積は約23坪。
やわらかな曲面の天井や片持ち階段、奥行きのある開口部など、コンクリートの可塑性を活かした設計がされています。

トップライトから落ちる光や光源を見せない照明の工夫などと相まって、優しい雰囲気が感じられます。
建物の平面が「ハ」の字になっているのに加え、開口部のデザインもほとんど「直角」や「対称」な部分がなく僅かに角度がついているなど、造形的な自由さや手の跡、遊び心のようなものも感じられました。
小さな住宅ですがその造られ方は実に濃密です。

正面のガラス戸は右の壁に引き寄せられ大きく開く

枠はテーパーがつけられ直角ではない

本棚の仕切りもデザインされている





大小2つの開口部はファサードに現れている

戸当たりがコンクリート


彫刻家に依頼しコンクリート打設後のジャンカをレリーフにしたとのこと
ふたつ目は、清家清の自邸「私の家」(1954年竣工)。
清家清は東工大で長く教鞭をとられた建築家で、私の父は清家研究室の出身です。
(写真撮影は自由ですが、SNSやWEBでの公開は禁止なのであいにく掲載はできません)

5m×10mの広さの平屋(約15坪)で、水まわりも含め間仕切りのない一室空間の小住宅。
生活空間を内と外で緩やかに繋げ、小さくても快適に暮らせる工夫に満ちていました。
昇降式の窓や移動畳などからも清家清の発想の自由さが感じられ、大変刺激になりました。
2軒とも設計の方向性は異なりますが、約70年前の設計とは思えない新鮮さが感じられます。
現代の技術で造る住宅が当時のそれより性能で上回るのは間違いありませんが、暮らしの快適さの尺度はそれだけでは測れないと改めて考えさせられるよい機会となりました。
見学の詳細や予約は以下のリンクをご覧ください。
VILLA COUCOU|Peatix

VILLA COUCOU|Peatix
VILLA COUCOU/ヴィラ・クゥクゥ 吉阪隆正の近代建築 1957年築/2022年修復 東京都渋谷区西原に佇む小さな建物です … powered by Peatix : More than a ticket.
「私の家」SEIKE HOUSE

「私の家」SEIKE HOUSE
清家清「私の家」 「私の家」は、建築家・清家清によって1954 年に建てられ、戦後の日本の住宅状況に対する清家清の挑戦を体現するものとして知られており、その価値から20…
