少し前のことになりますが、粟津邸(設計:原広司/1972)で開催された「Encounters」という展示会に行ってきました。
家具ブランドのKarimoku New Standard(KNS)が、粟津邸で新作家具を展示するというものです。(展示会はすでに終了しています)
粟津邸はグラフィックデザイナーの故・粟津潔のアトリエ兼住宅で、生田ならではの傾斜地に建っています。私たちの事務所からは歩いて行ける近さ。(坂道を上り下りしますが)
高低差をうまく利用した住宅で、坂道を上り最上階から建物に入ると、トップライトがある階段が1階のアトリエまで通じています。その階段が建物の中心軸になっていて、左右に部屋が配置されるという構成です。
閉鎖的な外観とは裏腹に室内は明るく、壁や床のデザインと相まって外にいるような半外部の雰囲気です。
また、オリジナルの使い方ではないでしょうが、アルコーブ状に配置されたホールに置かれたKNSの家具も、外を眺めながらゆっくり過ごしたくなるような雰囲気を醸し出していました。
うまい設計だなぁと感じたのは、敷地の高低差を利用したゾーニングです。
アトリエ付き住宅なので家族以外の出入りがあったはずですが、最上階から1階のアトリエまでは階段も含めて主にパブリックの空間で、その階段より下側がプライベートの空間(居間、キッチン、寝室、水まわり等)と高低差を利用して上下にうまく分けられています。
また、階段で回遊動線が作られパブリックとプライベートを目立たないように繋いでいたり、小さな吹抜けを利用した採光と換気の計画など生活を支える配慮も見て取れました。
KNSの家具や共に展示されていたアートも粟津邸の雰囲気とよく合っていて、相互に魅力を高めていたと思います。
粟津邸の図面や解説テキストは住宅遺産トラストのページで見ることができます。
興味のある方はご覧ください。
住宅遺産トラスト 粟津邸
https://hhtrust.jp/hh/awazu.html